子どものころ、どこか痛みを感じたら、いつもお母さんが痛いところを撫でさすってくれたことを覚えています。そうすると、不思議なくらいに痛みが治まりました。
痛みや不快を感じるところへ自然に手を当ててしまうのは、人間の本能だそうです。これは「手当て療法」と言います。
「手当て」とは?なぜ効果があるの?
お腹が痛い時や足がつったなどの時に無意識にそこに手が行く経験は誰にもあると思います。それで結構痛みが和らいだように思いましたが、成人してからは気のせいだろうと思っていました。
医学では人体内には太い神経と細い神経があります。太い神経は体の表面にあり、細い神経は内部に多くあります。
人間の脳は先に太い神経を通じた信号の方が届き、細い神経を通じた信号は後から届くと言われています。先に届いた信号を感じると一旦次の信号の受け入れを止めてしまうのです。
おなかが痛いのは体の中に痛みがあり、その時に体の表面を撫でたりさすったりすると、その刺激が太い神経に乗って先に脳に届き、脳はその刺激が届いた時には後から届く体の中の痛みを遮断してしまうという訳です。
なので、撫でている間は体の中の痛みを感じにくくなる、それが手当てが効果を持つ根拠だそうです。
手当て療法のやり方
手当て療法(てあてりょうほう)は触手療法(しょくしゅりょうほう)、手のひら療法(てのひらりょうほう)、手かざし、ハンド・ヒーリング、ヒーリング・タッチとも呼ばれています。
手のひらや指先を患部などに当てたりかざしたりするだけで身体の不調を治そうとする方法です。
元々、宗教と関係が深く、信仰があれば手当てによる癒しが可能だそうです。
桜美林大学の山口創准教授は、自分の著書「手の治癒力(草思社)」の中で次のように述べています。
不安や緊張を感じたときに、頬を撫(な)でたり手をさすったりして、心を落ち着かせる。 お腹が痛いときはお腹を撫で、頭が痛ければ頭を抱える。いずれも身体に自然に備わっている本能的ともいえる行動なのである。
こうして私たちは、自分自身の身体に手を当て、撫でさすり、皮膚を手で刺激することで感覚を覚醒させ、『体』を『心』へとつなげ、 さらには『頭』を『心』とつなげようと無意識のうちにしているのである。
『手当て』の原点は、そのように人間が自然にしている、手を使って全体のつながりを回復させようとする行為にある。
胃腸が良くなる手当て療法
寝るときに、仰向けにして、片手をへそのあたりに、もう片方をみぞおちのあたりに、ゆっくり腹式呼吸を繰り返しながら、撫でましょう。
そのまま寝てしまってもOKです。
便秘のときは、お腹の固く感じられる箇所に手を当ててください。
免疫力を向上させる手当て療法
寝るときに、仰向けにして、片手を胸の中央あたりに、もう片方を足の付け根に当てましょう。
手の位置は「気持ちいい」と感じる場所に、頭で考えず、からだが喜んでいるところへ手を当てましょう。
置いた手よりも、置かれた箇所に意識を向けるとより効果的です。
最後に
手当て療法ってなんか不思議な感じですね。
お金はかからないし、手を当てるだけで簡単なので、体に痛みを感じたら、手のひらを当てて、「よくなれ~」と気持ちを込めながら、撫でたりさすったりしてみましょう!